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SLIM

小型月着陸実証機SLIMの旅路

SLIM(スリム)は、狙った場所の100m以内に降りる「ピンポイント着陸」を試すための、小さな月着陸機です。2023年9月に打ち上げられ、月の重力で地球から約130万kmまで飛ばされたあと、太陽の重力を借りて4か月かけて月へ。2024年1月20日、日本で初めて月面に着陸し、目標から約55mの地点に降りました。エンジンの故障で逆立ちの姿勢になりながら、月の夜を3回越えた旅をたどります。

打ち上げ 2023-09-07 08:42 JST ロケット H-IIA 47号機 打ち上げ時の質量 約715 kg 着陸 2024-01-20 00:20 JST

4か月かけて月へ

ORBIT

地球を中心に、太陽の方向がいつも左になるように描いた図です。赤い線がSLIMの航路、点線が月の軌道です。10月4日に月のそばを通って大きく外へ飛ばされ、太陽の重力で向きを変えて、12月25日に月へ戻ってきます。右の出来事を押すと、その日付に移動します。

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SLIMの航路
位置は計算による再現 · ← 太陽の方向

月を回りながら高度を下げる

LUNAR ORBIT

月を回る軌道に入ったあと、約1か月かけて4段階で軌道を変え、月面から高度15kmの地点を通る軌道から降下を始めました。

① 12月25日 投入 600×4000km(周期6.4時間) ② 1月14日 高度600kmの円 ③ 1月17日 600×150km ④ 1月19日 600×15km → 0時に降下開始 月(半径1737km)と軌道は同じ縮尺

SLIMの旅

TIMELINE
  1. 打ち上げ

    種子島宇宙センターから、X線分光撮像衛星XRISMと一緒にH-IIAロケット47号機で打ち上げられました。約48分後にロケットから離れ、地球を回る細長い軌道(計画では高度約600km×約10万km)に入りました。

  2. 月へ向かい、月スウィングバイ

    10月1日に月へ向かう噴射を行い、10月4日に月のそばを通過。月の重力で軌道を大きく変えて、地球から遠く離れていきます。

  3. 地球から最も遠い点へ

    地球から約130万km、月の軌道の3倍以上も離れた地点を通過しました。ここでは太陽の重力の影響が大きく、それを利用して月へ戻る軌道に乗ることで、月の周回軌道に入るための燃料を節約しました。

  4. 月を回る軌道へ

    エンジンを噴射して、月面からの高度約600km×約4000km、周期約6.4時間の軌道に入りました。

  5. 軌道を下げる

    1月14日に高度600kmの円軌道、17日に600km×150km、19日の22時40分ごろに600km×15kmの軌道へと、3回に分けて高度を下げました。

  6. 降下を開始

    高度15km、秒速約1.8kmで、着陸目標の約800km手前から減速を開始。月面の写真をクレーターの地図と照らし合わせて自分の位置を確かめながら、20分かけて降りていきました。

  7. エンジンの故障

    高度約50mで障害物を確かめた直後、2基あるメインエンジンの1基が推力を失いました。それでも降下を続け、着地の直前には小型ロボットLEV-1とLEV-2(SORA-Q)を月面に放出しました。

  8. 日本初の月面着陸

    目標から東へ約55mの地点に着陸しました。高度50mの時点での位置の誤差は10m以内(3〜4m程度)で、目標の100m以内を大きく上回るピンポイント着陸を達成しました。ただし横向きの速さが残ったため、エンジンを上にした逆立ちに近い姿勢で止まりました。

  9. いったん電源を切る

    太陽電池が西を向いていて朝の太陽(東)が当たらず、発電できませんでした。電池の残りが約12%の時点で、電源を切りました。

  10. 発電が戻り、岩を観測

    太陽が西に回って太陽電池に光が当たり、運用を再開。カメラで周りの岩を撮影し、月の成り立ちを探る観測を行いました。

  11. 3回の越夜

    夜にはマイナス170℃にもなる月の夜を、設計では想定していなかったにもかかわらず3回越えて、通信が戻りました。

  12. 運用を終了

    4回目の夜のあとは通信が戻らず、電波を止める運用をもって、月面での活動を終えました。

SLIMが実現したこと

ACHIEVEMENTS
01

「降りやすい所」から「降りたい所」へ

これまでの月着陸は、誤差数km〜十数kmを見込んで、平らで広い場所を選んでいました。SLIMは誤差100m以内を目標にし、実際には10m以内の精度で降りられることを示しました。

02

写真で自分の位置を知る

降下中に撮った月面の写真のクレーターを、あらかじめ用意した地図と照らし合わせて、自分の位置を求めました(画像照合航法)。目標からのずれは、高度4000mで103m、500mで42.5m、50mで3.4mまで縮まりました。

03

小さく軽い探査機で

燃料を除くと約200kgの小さな機体です。月の重力と太陽の重力をうまく使う遠回りの軌道で、限られた燃料でも月にたどり着きました。

降下中の20分を地形データで再現したSLIMから見た月面もご覧ください。月を回って全体の地形を調べた日本の探査機は月周回衛星「かぐや」の旅路で紹介しています。

諸元

SPECIFICATIONS
名称
小型月着陸実証機SLIM Smart Lander for Investigating Moon
打ち上げ
2023年9月7日 8時42分(日本時間) 種子島宇宙センター、H-IIAロケット47号機(XRISMと相乗り)
質量
打ち上げ時 約715kg 燃料を除くと約200kg
大きさ
高さ約2.4m、幅約2.7m、奥行き約1.7m
着陸
2024年1月20日 0時20分(日本時間) 神酒の海の近く、シオリ・クレーターのそば(南緯13.3°・東経25.2°)
着陸の精度
目標から東へ約55m 高度50mでの位置の誤差は10m以内(3〜4m程度)
月面での運用
2024年1月20日〜8月23日 月の夜を3回越える

出典

SOURCES

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