Comet Interceptorから見た彗星
ESAと日本の彗星探査「Comet Interceptor」の3機、親機A・日本の子機B1・子機B2の位置に立って、彗星とのすれ違いを見ます。目標の彗星はまだ決まっていないので、計画の記事で「届いたか」を計算した5つの彗星で、もし行けたらどう見えるかを再現しました(計算では、どの彗星も今の計画の速度の変化では届きません)。すれ違いの2日前から最接近、その後までを、彗星と機体を切り替えて確かめられます。
3機から見た最接近
THREE PROBES| 機体 | 最接近の距離 | 核の見かけの大きさ(最接近) | 最接近の距離を通り過ぎる時間 |
|---|
核の見かけの大きさは、長い方の差し渡しの角度です(満月は約0.5°)。「通り過ぎる時間」は、最接近の距離と同じだけ進むのにかかる時間で、核の向きが大きく変わる目安です。
5つの彗星のすれ違い
FIVE COMETS| 彗星 | 相対速度 | 位相角 | 2日前の距離 | 核の大きさ | 核の見かけの大きさ A / B1 / B2 |
|---|---|---|---|---|---|
| ZTF彗星 | 秒速52km | 100° | 900万km | 2×1.5km | 0.11° / 0.13° / 0.29° |
| 紫金山・アトラス彗星 | 秒速99km | 101° | 1,708万km | 6×4.5km | 0.34° / 0.40° / 0.86° |
| ネオワイズ彗星 | 秒速142km | 59° | 2,461万km | 6×4.6km | 0.34° / 0.40° / 0.86° |
| 3I/ATLAS | 秒速66km | 95° | 1,134万km | 2.4×1.8km | 0.14° / 0.16° / 0.34° |
| ハレー彗星 | 秒速74km | 108° | 1,280万km | 14.9×8.2km | 0.85° / 1.00° / 2.13° |
相対速度は、計画の記事の計算で、L2点から直接向かったときの値です(秒速1kmの速度の変化では、どの彗星にも届きません)。位相角は、近づいてくる方向と太陽の方向のなす角で、90°より大きいと、近づくあいだは核の夜側を多く見ることになります。ジオットがハレー彗星に近づいたときも約107°でした。
この再現について
METHODすれ違いは直線
彗星の重力はとても弱いので、すれ違いの前後数日、探査機は彗星に対してまっすぐ一定の速さで動くとしました。相対速度は、計画の記事で計算した「L2点から直接向かい、彗星が黄道面を横切る点で会う」航路の値です。3機は核の太陽側を、計画の設計値の距離(A 1,000km、B1 850km、B2 400km)で通るとしました。子機は、分離(B1は最接近の約38時間前、B2は約2日前)までは親機と一緒にいて、分離のあとは一定の速さで横へ離れていき、最接近のときに設計値の距離になるとしています。
コマと尾は模型
コマ(頭)は、核からの距離の2乗に反比例して薄くなるガスとちりの雲とし、視線に沿って足し合わせた量を明るさにしています。そのため、コマの中に入ると空全体がうっすら明るくなります。広がりと明るさは、JPLの全光度の係数(M1・K1)から決めた目安です。5つの彗星の明るさの差は実際には数千倍ありますが、見やすいように縮めています。表示の明るさはカメラのように自動で調整しますが、同じ距離・同じ視野なら、どの彗星でも同じ露出(基準はハレー彗星)なので、暗い彗星は暗く見えます。ハレー彗星の核から約850kmでは、横を向いたときの空の明るさは日の入り直後の薄明るい空くらいと見積もられます。尾は、太陽と反対へまっすぐのびるイオンの尾と、軌道の後ろへ曲がるちりの尾の模式です。
核の形は仮
ハレー彗星の核は、ジオットの観測による大きさ(14.9×8.2km)の楕円体です。ほかの4つの彗星は核を直接見た観測がないので、推定の大きさ(ZTF彗星 約2km、紫金山・アトラス彗星とネオワイズ彗星 約5〜6km、3I/ATLAS 約2km)の仮の楕円体にしました。核の向きと自転も仮定です。表面はとても暗い(光を4%ほどしか返さない)ので、明るいコマに比べて暗く見えます。
日時は仮
日時は、計画の記事の計算で彗星が黄道面を横切る瞬間を最接近とした、仮のものです。太陽・地球・惑星の方向は、その日時の位置から求めました(3日のあいだに、ほとんど変わりません)。星と星座は実データで、どの機体から見ても、地球の夜空と同じ形です。
出典
SOURCES- EPSC-DPS2025-109(2025年)3機の最接近の設計値、すれ違いの速さ
- マイナビニュース(2024年6月4日)B1の分離の時期(最接近の約38時間前)と観測の時間
- JPL Small-Body Database彗星の軌道要素、全光度の係数 M1・K1、ハレー彗星の核の大きさ(Keller et al. 1987)
- C/2022 E3 (ZTF)(Wikipedia)核の大きさの推定(Liu & Liu 2024)
- A&A 698, A95(2025年)紫金山・アトラス彗星の核の半径の上限(約5.9km)
- Comet NEOWISE(Wikipedia)ネオワイズ彗星の核の大きさの推定(約5km)
- Hubble sizes up rare interstellar comet(ESA、2025年8月)3I/ATLASの核の大きさの範囲(0.32〜5.6km)
- d3-celestial恒星・星座線のデータ
- Astronomy Engine太陽・惑星・月の位置計算