火星探査機「のぞみ」の旅路
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1998年に打ち上げられた日本初の火星探査機「のぞみ」は、1999年10月に火星へ着く予定でした。地球を離れるときの不具合で燃料が足りなくなり、4年の回り道を選びます。その途中でも故障が重なり、2003年12月、火星の周回軌道に入ることを断念しました。計画と実際の航路を比べながら、その5年をたどります。
計画の航路と、実際の航路
ORBIT太陽を上から見た図です。点線は1999年10月に火星へ着く本来の計画、赤い線はのぞみが実際にたどった航路です。右の出来事を押すと、その日付に移動します。
のぞみの5年
TIMELINE打ち上げ
鹿児島宇宙空間観測所(現在の内之浦宇宙空間観測所)から、M-Vロケット3号機で打ち上げられました。日本初の火星探査機です。
1回目の月スウィングバイ
月から約4,100kmのところを通り、月の重力で軌道を大きく引き伸ばしました。
2回目の月スウィングバイ
月から約2,800kmのところを通過しました。
地球スウィングバイで加速が足りない
地球の上空約1,000kmを通るときにメインエンジンを噴射し、火星へ向かう軌道に入る計画でした。ところが、酸化剤を押し出すヘリウムガスのバルブが十分に開かず、加速が予定より100m/sほど足りませんでした。
補正で燃料を使いすぎる
2回の補正噴射で火星へ向かう軌道には乗せましたが、予定より多くの燃料を使いました。1999年に火星に着いてもブレーキをかける燃料が足りず、周回軌道に入れなくなりました。
4年の回り道を選ぶ
近日点が地球の軌道、遠日点が火星の軌道にある楕円を4年かけて3周し、2002年12月と2003年6月の2回の地球スウィングバイで加速して、少ない燃料で火星へ向かう新しい計画が選ばれました。火星到着は約4年遅れになります。
太陽フレアで電源が故障
大規模な太陽フレアの粒子の直撃を受け、電源の一つが故障しました。この電源は、姿勢制御用の燃料を温めるヒーターと、地上へ送るデータの変調を受け持っていました。ヒーターが使えず、燃料(ヒドラジン)が凍りました。
1回目の地球スウィングバイに成功
地球に近づいて温まると燃料が解けはじめ、速度を修正したうえで、地球から3万6,000kmの距離を通過するスウィングバイに成功しました。
2回目の地球スウィングバイ
地球の近くを再び通過し、火星へ向かう軌道に入りました。
火星周回軌道への投入を断念
電源系の故障を直せず、周回軌道に入るためのエンジン噴射ができないと判断されました。20時45分から21時15分にかけて、火星にぶつかる確率を下げる軌道変更の指令が送られました。
火星から約1,000kmを通過
周回軌道には入らず、火星の表面から約1,000kmのところを通り過ぎました。
太陽を回る人工惑星に
火星の重力圏を離れ、太陽を中心とする軌道で旅を続けています。のぞみには、公募で集まった約27万人の名前が載っていました。
なぜ火星周回軌道に入れなかったのか
WHY1998年:バルブの不調で燃料不足
地球を離れるときの加速が足りず、補正に燃料を使いすぎました。予定どおり1999年に火星へ着いても、ブレーキをかける燃料が残っていませんでした。
回り道のあいだの故障
燃料を節約するための4年の回り道は、宇宙空間に長くいることでもありました。その間の2002年に、太陽フレアで電源が壊れました。
火星直前で直せなかった
電源の故障で、周回軌道に入るための大きなエンジンを噴射できない状態が続きました。遠隔での修理は間に合わず、2003年12月9日に断念が決まりました。
諸元
SPECIFICATIONS- 名称
- のぞみ 開発名 PLANET-B
- 打ち上げ
- 1998年7月4日 3時12分(日本時間) 鹿児島宇宙空間観測所、M-Vロケット3号機
- 質量
- 540kg うち推進剤282kg
- 目的
- 火星の上層大気と、太陽風との相互作用の観測
- 計画の火星軌道
- 近火点 高度300km(のち150km)、遠火点 火星半径の15倍 実現せず
出典
SOURCES- 「のぞみ」の月スウィングバイ(JAXA宇宙科学研究所)1回目の月スウィングバイ
- 宇宙開発委員会への報告(1998年12月、文部科学省)2回目の月スウィングバイ、地球スウィングバイ、補正
- 「のぞみ」の地球脱出と新しい軌道計画(JAXA宇宙科学研究所)バルブの不調、新しい計画
- 打撃(JAXA宇宙科学研究所)2002年の故障、地球スウィングバイ
- 「のぞみ」再び惑星間空間へ(JAXA宇宙科学研究所)断念、火星通過、名前の搭載
- Nozomi (spacecraft)(Wikipedia)質量、目的、計画の火星軌道、2003年6月の地球スウィングバイ
- Astronomy Engine地球・火星の位置計算