小惑星探査機「はやぶさ」の旅路
2003年に打ち上げられた「はやぶさ」は、イオンエンジンで小惑星イトカワへ向かい、着陸して表面の試料を採りました。その直後に燃料漏れと通信途絶に見舞われ、地球への帰還は3年延びます。エンジンの故障も重なるなか、2010年6月、試料の入ったカプセルを地球に届けました。その7年をたどります。
イトカワへの往復
ORBIT太陽を上から見た図です。赤い線がはやぶさの航路、点線が地球とイトカワの軌道です。右の出来事を押すと、その日付に移動します。
イトカワの形
SHAPE長さ約535mの小さな小惑星です。大きな「胴体」と小さな「頭」がくびれでつながったような形で、その姿がラッコに似ていると話題になりました。ドラッグで回して見られます。
はやぶさの7年
TIMELINE打ち上げ
内之浦宇宙空間観測所(当時は鹿児島宇宙空間観測所)から、M-Vロケット5号機で打ち上げられました。目的は、将来のサンプルリターンに必要な4つの技術、イオンエンジンによる航行、自律航法、微小重力下での試料採取、カプセルによる回収の実証です。
地球スウィングバイ
打ち上げから1年間、イオンエンジンで加速しながら地球の近くを回り、東太平洋の上空約3,700kmを通過して、地球の重力でさらに加速しました。
イトカワに到着
地球から約3億km離れた場所で、長さ約540mの小惑星イトカワから20kmの地点に着きました。約2か月半、形や表面の様子、鉱物を調べています。
2回の着陸
イトカワに着陸して表面の試料採取を試みました。弾丸を撃ち込む仕組みは作動しなかったとみられますが、着地の際に舞い上がった微粒子が容器に入りました。
燃料漏れと通信途絶
着陸後に化学エンジンの燃料が漏れ、このエンジンは使えなくなりました。12月8日、漏れたガスの影響で姿勢が乱れ、地球との通信が途絶えました。
帰還を3年延期
当初は2007年に地球へ戻る予定でしたが、2010年6月の帰還をめざす計画に変わりました。
通信が戻る
ビーコン信号を受信し、少しずつ姿勢を立て直して、3月6日には3か月ぶりに位置を決定しました。キセノンガスを噴射して姿勢を保つ工夫も行われました。
地球への帰還巡航を開始
イトカワ付近を離れ、イオンエンジンでの本格的な帰還運転に入りました。
イオンエンジンが停止
運転中のイオンエンジン1台が、部品の劣化で自動停止しました。ほかのエンジンも単独では正常に動かない状態でした。
2台を組み合わせて再開
エンジンAの中和器とエンジンBのイオン源を組み合わせ、2台で1台分として運転する方法で、帰還運転を再開しました。
地球に帰還
カプセルを分離したあと、はやぶさ本体とカプセルは大気圏に突入しました。本体は燃え尽き、カプセルはオーストラリアのウーメラ砂漠に着地しました。
イトカワの微粒子と確認
カプセルの中の微粒子の大半が、イトカワのものと確認されました。小惑星から試料を持ち帰ったのは世界で初めてです。
どうやって帰ってきたのか
RECOVERY通信途絶からの復旧
姿勢を失って通信が途絶えたあとも、地上から探査機の電波を探し続け、約1か月半後にビーコン信号を受信しました。帰還を3年延ばし、時間をかけて立て直しました。
化学エンジンなしでの姿勢制御
燃料漏れで化学エンジンを失い、姿勢を保つ装置(リアクションホイール)も3台のうち2台が故障しました。イオンエンジン用のキセノンガスを噴射して、姿勢を保ちました。
壊れたエンジンを組み合わせる
帰還まで残り半年の2009年11月、使えるエンジンがなくなりかけました。2台のエンジンの、まだ使える部分どうしを組み合わせて推力を得て、2010年6月の帰還に間に合わせました。
諸元
SPECIFICATIONS- 名称
- はやぶさ 開発名 MUSES-C
- 打ち上げ
- 2003年5月9日 13時29分(日本時間) 鹿児島宇宙空間観測所(現・内之浦宇宙空間観測所)、M-Vロケット5号機
- 質量
- 約510kg 太陽電池パドルを含めた幅は約6m
- 主エンジン
- マイクロ波放電式イオンエンジン 4台 往復で合計約4万時間運転し、秒速約2.2km加速
- 総飛行距離
- 約60億km
出典
SOURCES- 小惑星探査機「はやぶさ」(JAXA宇宙科学研究所)打ち上げ、地球スウィングバイ、目的、質量
- はやぶさの帰還(JAXA)経緯、イオンエンジンの運転時間
- 「はやぶさ」探査機の状況について(JAXA、2006年3月)通信途絶と復旧、帰還計画の変更
- 「はやぶさ」の現状について(JAXA、2009年11月)イオンエンジンの停止と組み合わせ運転
- はやぶさ (探査機)(Wikipedia)当初の帰還予定、再突入・回収の時刻、総飛行距離
- 25143 Itokawa(JPL Small-Body Database)イトカワの軌道要素
- NASA 3D Resources: Asteroid 25143 Itokawaイトカワの形(3Dプリント用の2分割モデルを結合・簡略化)
- Astronomy Engine地球の位置計算