金星探査機「あかつき」の旅路
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2010年12月、「あかつき」は主エンジンの故障で金星の周回軌道に入れず、金星を通り過ぎました。それから5年。太陽のまわりを約9周して金星に追いつき、本来は姿勢を変えるための小さなエンジンだけで、2015年12月7日に金星の周回軌道に入りました。日本で初めて、地球以外の惑星を回る探査機になりました。
5年かけて金星に追いつく
ORBIT赤い線があかつきの航路です。「金星と一緒に回る視点」に切り替えると、金星を右に止めて見た動きになります。太陽を回る周期が金星(225日)より短い約200日だったため、あかつきは金星から少しずつ先へ進み、太陽のまわりを約9周するあいだに金星のまわりをぐるりと一周して、金星のもとへ戻ってきました。
金星をまわる軌道
VENUS ORBIT金星を中心にした図です。当初の計画は、金星のすぐ近くを30時間で回る軌道でした。小さなエンジンで入った実際の軌道は、地球から月までの距離(約38万km)を超える細長い楕円になり、1周に13日以上かかりました。
あかつきの旅
TIMELINE打ち上げ
種子島宇宙センターから、H-IIAロケット17号機で打ち上げられました。
金星周回軌道への投入に失敗
主エンジンを12分間噴射する予定でしたが、3分足らずで止まり、金星を通り過ぎました。燃料を押し出すヘリウムの配管の弁が塩の結晶で詰まり、燃焼が異常になってエンジンの噴き出し口が壊れたと考えられています。
主エンジンの試験噴射
推力は予定の約1割しか出ず、主エンジンは使えないと判断しました。使わない酸化剤約65kgを捨てて、機体を軽くしました。
小さなエンジンで軌道を変える
姿勢制御用のエンジン(推力23N)4基で3回噴射し、合計243.8m/s減速して、2015年12月に金星と再会する軌道に乗せました。
金星周回軌道に投入
姿勢制御用のエンジンを約20分噴射し、金星を回る軌道(高度約400km〜約44万km、周期13日14時間)に入りました。日本初の惑星周回機です。
巨大な弓形の模様を見つける
投入直後の観測で、雲の上に南北約1万kmの弓形の模様を見つけました。雲が流れても位置が変わらない、地形が生んだ大気の波でした。
軌道を小さくする
遠い点を約37万kmに下げ、周期を約10日にしました。5月から定常観測を始めました。
赤外線カメラ2台が使えなくなる
1μm・2μmカメラの電子回路が故障しました。残りのカメラで観測を続けました。
スーパーローテーションの仕組みを解明
昼に温められ夜に冷える「熱潮汐波」が、雲を自転の約60倍の速さで回し続けていることを突き止めました。
通信が途絶える
姿勢を保つ精度が下がった状態が続き、通信できなくなりました。
運用終了
復旧の見込みがなく、設計上の寿命も大きく超えていたため、運用を終えました。金星の大気を8年以上観測し続けました。
あかつきが実現したこと
ACHIEVEMENTS5年後の再挑戦
主エンジンを失っても、姿勢制御用の小さなエンジンで軌道を変え、5年後に金星の周回軌道に入りました。日本初の惑星周回機になりました。
太陽系最大の山岳波
地表の山が生んだ大気の波が雲の上まで届き、南北約1万kmの動かない弓形の模様を作っていることを見つけました。
惑星の気象衛星
紫外線と赤外線のカメラで雲の動きと温度を測り、スーパーローテーションの仕組みを解明しました。地球の天気予報の手法(データ同化)も、金星で初めて使いました。
諸元
SPECIFICATIONS- 名称
- 金星探査機「あかつき」 PLANET-C、Venus Climate Orbiter
- 打ち上げ
- 2010年5月21日 6時58分(日本時間) 種子島宇宙センター、H-IIAロケット17号機
- 質量
- 約518kg 燃料を含む
- エンジン
- 主エンジン 500N(2010年に故障) 姿勢制御用エンジン 23N × 4基で軌道投入
- 観測機器
- カメラ5台と電波の装置 紫外線(UVI)、中間赤外(LIR)、1μm(IR1)、2μm(IR2)、雷・大気光(LAC)、超高安定発振器(USO)
- 金星を回る軌道
- 高度約1,000km〜約36万km 周期 約11日(運用終了時の公表値)
出典
SOURCES- Venus Climate Orbiter "AKATSUKI" Operation Completed(JAXA、2025年9月18日)打ち上げ時刻、運用終了、最終的な軌道、成果
- Results of the Venus Orbit Insertion maneuver using the RCS thrusters(JAXA、2015年12月7日)2015年の噴射の時刻と時間
- あかつきの金星周回軌道投入について(JAXA、2015年12月9日)投入後の軌道
- あかつきの金星周回軌道再投入計画(JAXA、2015年2月6日)近日点0.6AU、姿勢制御用エンジンの推力
- 金星探査機「あかつき」の成果(科学技術振興機構 サイエンスポータル、2026年2月25日)失敗の原因、成果、質量
- Akatsuki's new orbit, first images, and science plans(The Planetary Society)当初の計画軌道(30時間)の理由
- Akatsuki (spacecraft)(Wikipedia)失敗後の周期203日、2011年の噴射、2016年の軌道変更、観測機器、年表
- Astronomy Engine地球・金星の位置計算